売り場は本当に必要か?

池本克之です。 あらゆる業界で「売り場」は 本当に必要なのか? という大きな課題がある。 有名なところでは、テスラ社。 「売り場=従来の店舗モデル」が 必ずしも最適ではないという思考に基づき、 店舗数縮小やオンライン化を 2019年に打ち出した。 ネット通販の拡大によって、 消費者はスマホひとつで欲しいものを 購入できる時代になった。 わざわざ店に足を運ばなくても、 クリックひとつで翌日には手元に届く。 便利さだけを見れば、これ以上の仕組みはない。 では、リアルな売り場はもういらないのか? 私はそうは思わない。 確かに、売り場の“機能”は変化している。 ただ商品を並べ、販売する場ではなくなった。 むしろ今は 「体験」や 「共感」を生む空間としての役割が 求められている。 ネットにはないリアルな価値、 それを提供できる売り場が、生き残る。 人は、モノだけではなく、意味を買う。 そして意味は、 人との関わりや空気感から生まれる。 その「空気」は、画面越しでは伝えきれない。 一方で、ネット通販の存在は否定できない。 むしろ、リアルとネットを どう組み合わせるかが重要だ。 店舗で体験し、オンラインで購入する。 あるいは、SNSで興味を持ち、店舗で確かめる。 そうした流れを自然に設計できる企業が これからの勝ち組になると思う。 特に中小企業は、この発想の転換が鍵になる。 「店舗があるから売れる」 「ネットが主流だから店舗はいらない」 このどちらかに偏ると、成長が止まる。 お客様の行動の変化を見極め、 リアルとデジタルの“橋渡し”を 設計することが必要だ。 それがこれからの売り場の本質だと 私は考えている。 今後、AIやデータ分析の進化により、 個人ごとの嗜好や購買行動はさらに可視化される。 たとえば、AIが 「この顧客にはこういう接客が合う」と予測し、 店舗でその情報を活かす。 ネットの情報と現場の接点が連動する世界は、 もうすぐそこに来ている。 つまり、売り場の価値は「人が動く場所」ではなく、 「データと感情が交わる場所」に 変わっていくのである。 一方で忘れてはいけないと思うのは 「人の温度」である。 AIがいくら精密でも、 最後にお客様の心を動かすのは“人”だ。 「また来たい」と思ってもらえるのは、 店の雰囲気であり、 接客であり、 言葉のやりとりだ。 そこにこそ、 リアル売り場の未来がある。 これからのビジネスは、 “どちらか”ではなく、“どちらも”。 リアルの強みを活かしながら、 デジタルを使いこなす。 その融合ができた企業だけが、生き残る。 売り場があるかどうかよりも、 そこに「何を生み出すか」が 問われる時代である。

プレイングマネジャーの時間の使い方

池本克之です。 2025年、企業の多くが 慢性的な人材不足に直面している。 人手が限られる中で、 プレイングマネジャーの役割は ますます重要性を増している。 実際、管理職の約7割が 「自ら売上をつくりながら 部下を育成している」と 答えている統計がある。 いわば「自分でやって、自分で育てる」という 二重の責任を負っているのが、 いまのプレイングマネジャーの 実態である。 しかし、ここに大きな課題がある。 プレイヤーとして走りながら マネジャーの責務を果たすのは、 想像以上に難易度が高い。 業務量が肥大化し、 平均帰宅時間は20時を過ぎる ケースも珍しくない。 家庭とのバランスが崩れ、 精神的な余裕を失っていく、しまいには 精神的に病んでしまうマネジャーもいる。 会社でも家でも休まらず、 結果としてパフォーマンスが 落ちていくのだ。 では、どうすればよいか。 まず「時間で切り分ける」ことが大事だ。 たとえば 毎朝9時〜11時は 部下の育成・組織運営に集中、 午後は営業現場、クライアントと会う、 といったスケジュール感だ。 プレイヤーとマネジャーの時間を あらかじめ区切って行動する。 これはシンプルだが 非常に有効な手法だ。 タイムマネジメントは習慣であり、 ルール化すれば必ず整っていく。 また、業務の切り分けだけでは不十分だ。 根本的な解決策は 「部下に仕事を任せること」である。 マネジャーが全てを抱えていては、 組織は育たない。 任せることで部下の成長を促し、 結果として マネジャー自身の時間も生まれる。 この信頼と委任の循環をつくることが、 現代型マネジメントには欠かせない。 プレイングマネジャーは 会社にとって極めて価値の高い人材である。 その存在が潰れてしまえば、 組織の屋台骨が揺らぐ。 だからこそ、時間を味方につけ、 任せる力を磨くべきである。 まずは最初の一歩、 時間を「分けて使う」ことから 始めてほしい。 それが、 自分自身の精神的余裕を取り戻す 第一歩となる。

部下の褒め方

池本克之です。 ある調査では、 「あなたは部下を褒めますか?」 という問いに、 「(部下を)褒めている」と答えた 課長は78%を上回ったのに対し、 「上司はあなたを褒めますか?」 という問いに、 「(上司は自分を)褒める方だ」と 回答した一般社員は50%に満たない 結果となったそうだ。 これを見てもわかるように、 上司の褒めている感覚と 部下の褒められているという感覚には 大きな差があるようだ。 しかし、褒めるのが苦手な人が 部下を褒めようと思っても、 どのように褒めたらいいのか? 何を褒めたらいいのか? と、戸惑うかもしれない。 今まで褒めていなかったのに、 いきなり褒めるのは照れくさい、 と感じる人もいるだろう。 だが、いまどきの若い部下のエンジンに 火をつけるには、 何らかのアクションが必要になる。 部下を褒めるのにも、 褒めるコツというのがある。 それは、おおげさに 「すばらしい!」 と褒め称えるのではなく、 さりげなく、 しかし具体的に褒めると いうのが大切だ。 例えば、 「今の電話の対応はここが良かった」 「資料のここがよくできていた」 など、具体的に褒めるのがいい。 ただ単に、 「資料はよくできていたな」 と言われるよりも、 ここが良かったと言われたほうが 嬉しさが増す。 人間は、褒められれば 次もがんばろうと思える。 ちょっとした言葉が 次への励みになることは多くあるのだ。 それに、自分のしていることが 会社や周りの人の役に立っていると思えれば、 やりがいを感じることにも繋がる。 上司の褒めている感覚と、 部下の褒められているという感覚には 大きな差がある。 この差を少しでもなくせれば、 お互いの信頼関係が良くなり、 今までよりもスムーズに仕事が 進むようになるだろう。 「今まであまり褒めていなかったな…」 「褒めてはいたけど、 具体的には褒めていなかったかも しれない…」 そう思う人は、 今日話したように、 さりげなく、 しかし具体的に褒めるということを 実行してみてはどうだろうか。 それが、 部下のエンジンに火をつけることになり、 スムーズに仕事をしてもらうことにも なるのだから。

カリスマオーナーの限界

池本克之です。 いま、企業の成長において 「現場力」 「分散された意思決定」は 避けて通れないテーマである。 以前、僕がコンサルに入った企業に いわゆる「カリスマオーナー」がいた。 彼は確かに魅力的だったし、 行動力もあり、 社員の前では常に強い 「リーダーシップ」を発揮していた。 しかし その会社が 「オーナーの器を超えて成長する未来」は どうしても描けなかった。 なぜか? 理由はシンプルだった。 オーナーがいなければ、 社員は何一つ決められない。 まるで全社員が彼の指示を 待っているような組織文化が、 深く根を張っていたのだ。 彼のカリスマ性が、 組織の思考停止を招いてしまっていた。 2025年の今、 ビジネスの環境は日々変わる。 一人のリーダーの判断だけでは追いつかない。 むしろ、現場で何が起きているかを 一番知っているのは、 最前線にいる社員たちだ。 意思決定が遅れれば、 チャンスを逃し、競争に負ける。 そして何より、 社員たちは 「自分の意見が必要とされていない」と 感じるようになる。 そうなれば、やりがいも生まれないし、 離職にもつながる。 誤解しないでほしい。 カリスマ性そのものが悪いのではない。 ただ、それが 「全部自分で決めなければいけない」方向に 働いてしまうと、組織は脆くなる。 これからの社長に求められるのは、 「自分で全部決める」ことではなく、 「社員が自ら動けるように、 問いかけ、場をつくり、支えること」 ではないだろうか。 トップダウン一辺倒の時代は終わった。 意見を引き出し、 力を信じ、 組織全体が目的に向かって動く。 そんな“共創”のチームをつくれる社長こそが、 次の時代をリードしていくはずだ。   1029

会社倒産の危機

池本克之です。 悪いことが起きたら すぐに報告・共有してほしいものだ。 なぜなら、対応が遅れることで 会社が危機にさらされる場合も 充分あるからだ。 考えただけでも怖いし 恐ろしい… だが、スタッフの中には 「これを言うと怒られるかもしれない…」 だから 「言うのをやめておこう…」 と思う人もいる。 バレるまで隠しておこうとする人もいる。 (いずれバレるのにそのときは隠そうとする) なぜそんな行動を取るのかと言うと、 怒られるのが怖い、 怒られるのが嫌だ。 また、自分の立場が危うくなるのが 嫌というのもあるだろう。 それ以外にも、自分が責められる、 評価が下がるのを恐れている人もいる。 こうなっていくと、 問題は放置され 気づいたときには遅かった… ということにもなり兼ねない。 最悪の場合、 会社が大損害を受けたり、 倒産することもあるのだ。 (冷や汗が出そうである…) では、どうしたら スタッフが素直に報告・共有を してくれるようになるのだろうか? それは、普段から 悪いことが起きたときには どんな行動を取ればいいのか? どんな行動を取るのが正解なのか? というのをよく伝えておく 必要がある。 それも、たった1回ではなく 大事なことは何度でもだ。 そして、悪いことが起きたときでも その責任は問わない というところまで伝えておけば 安心して伝えられるだろうし、 言わない方が悪いのだと教えておけば 報告や共有をしてくれるように なるだろう。 そうやって、報告や共有をしやすい 環境を作っていく。 誰だって仕事をしていれば ミスやトラブルは必ず起こる。 しかし、それを言わずに隠しておくのは 会社としてとても困ることだ。 悪いことだからこそ 早めに言えるような企業文化を つくっておけば 問題が深くなる前に 対処できるようになる。 たった1つのミスやトラブル、 クレームが時間が経つにつれて 大きな問題になることはある。 たとえ悪いことが起きたとしても スタッフがすぐに 報告・共有してくれるように、 どんな行動が正しい行動なのかを教えるのは 社長としてとても大切な仕事だと考えている。

正しいことが伝わらないとき

池本克之です。 社長という立場では、 ときに「正しいこと」を 言わざるを得ない場面がある。 数字を守ること、 品質を維持すること、 顧客の期待に応えること。 どれも経営に欠かせない大切なことだ。 けれど、その正論が社員にとっては 時にきつく聞こえ、 「また厳しいことを言っているな」と 感じられてしまうことがある。 決して社員を追い詰めたいわけではないのに、 結果的にそう伝わってしまう。 このすれ違いは、 経営に携わる者なら 誰もが経験するものではないだろうか。 大切なのは、 正しいことをただ伝えるのではなく、 「どうしたら届きやすくなるか」を 考えることだ。 まず意識したいのは、 社員の現実に触れてから話すことだ。 「売上をもっと上げよう」と言う前に、 「今は暑さの中で本当に大変だと思う」 「現場の忙しさはよく分かっている」と 一言添える。 これだけで社員の受け止め方は大きく変わる。 「分かってもらえている」と感じられると、 人は耳を開きやすくなるからだ。 次に、正論を大きなスローガンで終わらせず、 小さな行動にまで落とし込む工夫がいる。 「顧客満足を高めよう」という言葉だけでは 漠然としているが、 「電話に出るときは 自分の名前をはっきり名乗ろう」 「作業の前に 安全確認を声に出してしよう」 といった具体的な行動に翻訳すれば、 社員は「それならできる」と思える。 小さな積み重ねが 大きな成果につながるのだ。 さらに欠かせないのは、 社員の声を吸い上げることだ。 一方的に「こうすべきだ」と 伝えるだけでは壁ができやすい。 けれど「やってみてどうだったか」 「どんな負担があったか」を 社員から聞き取り、改善につなげると、 言葉は押し付けではなく対話になる。 自分の意見が反映されたとき、 人はその方向性を 自分ごととして受け止めやすい。 そして何より大切なのは、 社長自身が行動で示すことだ。 暑さの厳しい現場に顔を出し、 社員と一緒に汗をかく。 営業数字を口にするだけでなく、 自ら顧客に足を運ぶ。 背中で語る社長の姿は、 厳しい言葉を温かい力に変えていく。 社員は「一緒にやっている」と 感じられるとき、 正論を支えとして受け止めやすくなる。 社長が正しいことを言うのは当然の責任だ。 けれど、 正しいことがそのまま届くとは限らない。 だからこそ、共感を添え、 具体的な行動に落とし込み、 社員の声を反映し、 自ら実践してみせる。 その工夫ひとつで、 厳しい言葉は「未来への合図」へと変わる。 正しさを厳しさで終わらせず、 温かさをもって伝えていくこと。 それが組織を前へ進める力になるのである。 PS 組織を前に進めたい場合、 まずは何をすればいいのか? そのポイントはここで話しています。 ↓ https://pajaposs.com/campaign/stktai0728_mm/

切り替えの速さが、社長の武器になる

池本克之です。
経営者を見ていて、
成果を出している人には共通点がある。
それは「気持ちの切り替え」がうまい、
という点である。
悩むことがあっても、長く引きずらない。
人間関係でイラッとしても、翌日には
笑顔で対応している。
週末はしっかり休み、
月曜には切り替えて戦闘モードに戻っている。
これができる社長は、結果もスピードも違う。
逆に、気持ちの整理が苦手な社長ほど、
判断が鈍る。
「あの部下が…」
「昨日の会議が…」
と、頭の中が過去でいっぱいになる。
すると、今の決断に集中できない。
だからこそ、
オンオフの切り替えが重要なのだ。
休むときは休む。
考え込まずに切る。
それでいて、必要なときには一気に集中する。
このリズムを意識すると、
経営判断の質も、行動のキレも変わってくる。
意識的に頭を軽くしてみよう。
心を休めるのも、社長の「仕事」である。

社長の孤独と、どう向き合うか

池本克之です。 経営者は孤独である。 この事実は、 社長業を経験した者にしかわからない。 経営とは、決断の連続である。 判断に迷ったとき、 社員に相談できる内容は限られている。 友人や家族にも話せないテーマも多い。 事業戦略、資金繰り、採用、 人事、競合対策…… どれも重たく、正解がなく、 誰かに頼りたいときほど、 結局は「自分で決めるしかない」という 現実に直面する。 この「孤独感」を マイナスに捉え続けてしまうと、 経営の推進力は確実に鈍る。 孤独から不安が生まれ、 不安から疑心が生まれ、 やがて人を信じられなくなる。 社員の些細なミスに過敏になり、 会議でも「本音」が飛び交わなくなる。 トップの姿勢がチームの空気を作るからこそ、 社長が孤独に飲み込まれると、 会社全体が暗いトーンに染まってしまう。 では、どう向き合えばいいのか。 結論から言えば、 社長は「孤独に慣れる」のではなく、 「孤独を選んでいる」と 自覚することが大事である。 リーダーは常に孤独だ。 だがそれは、 誰かに強いられたものではない。 自らが「全体の責任を持つ」 と決めた結果なのだ。 つまり、孤独は自分で選んだ スタイルの一部であると捉え直す必要がある。 私自身、上場企業の社長を経て、 複数の事業再生を経験してきた。 孤独を感じない日はなかった。 だが、ある時からその感情に飲まれず、 「誰に信じてもらいたいか」よりも 「自分は誰を信じ切るか」に フォーカスを切り替えた。 この転換が、全てを変えた。 信じ切る対象を社内に見出したとき、 人を育てようとする意志が生まれる。 社員との対話が増え、 相談の質が変わり、 関係性が深化する。 自分一人で抱えるより、 周囲を巻き込む勇気を持った方が、 結果的に良い決断ができるようになる。 孤独は「経営者だけの悩み」ではない。 現場のリーダーも、管理職も、 家庭を支える人たちも、 それぞれの立場で孤独と向き合っている。 だからこそ、 社長が自分の孤独に正面から向き合い、 それを前向きな行動に変換していくことが、 組織全体にとって希望となる。 孤独から逃げず、向き合い、超える。 それが、社長としての覚悟である。

近すぎず、遠すぎず

池本克之です。 「部下との距離感がわからない」と 悩む管理職が増えている。 2025年4月に実施された ある民間調査では、 「上司との距離が近すぎて ストレスを感じる」と 回答した若手社員が38.4%。 一方で 「上司が遠すぎて相談しづらい」と 感じている社員も42.1%にのぼった。 この結果が示すように、 上司と部下の関係は 「近すぎても、遠すぎてもダメ」なのである。 では、どうすれば “ちょうどいい距離感”を保てるのだろうか。 まず前提として、いまどきの若手社員は、 「過干渉」や 「プライベートへの踏み込み」に敏感である。 ランチや飲み会への強制参加、 休日の連絡などは避けるべきだ。 逆に、関わらなさすぎるのも問題である。 部下は、「放置されている」と 感じると、不安を抱きやすくなる。 特に入社1~3年目の社員は 「見てくれている人がいるか」を 非常に気にする傾向がある。 そのため、部下との距離感は 「一方的に縮める」のではなく、 「相手が望む距離に寄り添う」ことが 大切である。 たとえば、以下の3つの行動が有効だ。 定期的な1on1で、まず雑談から始める。 いきなり業務の話をしてはいけない。 「最近どう?」という一言をふればいい。 社員が話しはじめたら、 社長は聞き役にまわる。 これで、心の壁はぐっと低くなる。 相談には即リアクションする。 「困ったら言ってね」 と言うが、本当に困ったときに 相談してくる社員は実際には少ない。 もし実際に相談されようものなら、 即応答・即対応すべきだ。 これで信頼のベースが築かれる。 干渉しないが、 “気にかけているよ”ということは伝える。 メールやチャットで一言添える、 「よくやってるね」と小さく声をかける。 これは “遠すぎる上司” の対策にもなる。 コロナ禍以降、 リモートワークやフレックス制度が 定着したことにより、 物理的な距離と心理的な距離のバランスが、 より一層問われている。 近すぎず、遠すぎず。 その“ちょうどいい距離感”を探るためには、 一人ひとり違う感覚を理解する 柔軟性と、観察力が必要なのだ。 上司が歩み寄ろうとする姿勢は、 間違いなく部下の安心感と 信頼につながる。 そして、その信頼が、 離職率を下げ、 生産性を高め、 組織全体の力を 押し上げていくのだと私は考えている。 PS 経営者にとって、課題は尽きません。 だからこそ、 解決の一歩を踏み出すことが重要です。 池本克之によるコンサルティングの場を ご用意しています。 まずは気軽に問い合わせをしてください。 詳細・お問い合わせは以下よりどうぞ。 ↓ https://www.ikemotokatsuyuki.net/contact/form4/

毎週の花がつくる、オフィスの呼吸

池本克之です。 私のオフィスでは、 毎週必ず花を飾っている。 花の種類は季節によって変わる。 桜の枝を飾ることもあれば、 ひまわりのように元気な花を 置くこともある。 控えめな白い花だけを 揃えることもある。 この習慣は単なる趣味や装飾ではない。 ましてや「贅沢」や 「コストのかかること」という 発想でもない。 むしろ、これは経営において 重要な意味を持つ行為である。 第一に、花は「場の空気」を変える。 人は無意識に 環境の影響を受けている。 空気が澱んでいる場所では、 会話も思考も重くなる。 反対に、目に美しいもの、 自然のエネルギーを感じられるものが ある空間では、 人の表情が柔らかくなり、 声のトーンも上がる。 これは心理学や 環境デザインの分野でも 証明されていることである。 第二に、花は「時間の流れ」を感じさせる。 企業経営は数字やスケジュールに 追われがちだ。 しかし、季節は数字ではなく、 自然のサイクルで進む。 花を入れ替えるたびに、 私たちは「今はこの季節か」と気づき、 日常の中に小さな節目が生まれる。 それは組織にとって、 呼吸を整える時間でもある。 第三に、花は「文化」をつくる。 オフィスに花があるということは、 「この会社は空間と人を 大事にする」という メッセージになる。 社員や来客は、 それを言葉ではなく感覚で受け取る。 文化は言葉だけでは根づかない。 日々の行動や環境の積み重ねが 文化を形づくるのである。 私は経営者に対して、 「数字で考える」ことを 強く勧めている。 しかし、数字だけでは組織は動かない。 数字は経営の骨格を支えるが、 血を巡らせるのは感情であり、 感覚である。 その感覚を養うためのひとつの方法が、 この「花を飾る」という行為だ。 さらに言えば、 花を飾る習慣は 「経営者の心の余裕」を示す。 忙しさや問題解決に追われる日々の中でも、 花を選び、置き、 愛でる時間を持てるということは、 自分と組織のバランスを取る力がある ということだ。 これは単に見栄えの問題ではなく、 経営の姿勢そのものである。 オフィスの花を飾っている、 社員もふと笑顔になる。 生の花は面倒だ、 という価値観ではなく、 きれいなものがあると 気持ちがいいという価値観が大事だ。 来客が声に出さなくても 「きれいだな」と思ったり、 「こんな花あるんですね」と声をかける。 そこに生まれる会話や空気の変化は、 数字には現れにくいが、 確実に組織のエネルギーを高める。 経営において、 費用対効果という考えは大切である。 しかし、効果は必ずしも 短期的な売上や利益だけで 測れるものではない。 長期的に見れば、 空間づくりや文化づくりに投じる 小さなコストが、大きな価値を生む。 だから私はこれからも 毎週花を飾り続けるという 価値観を大事にしたい。 それはオフィスのためであり、 社員のためであり、 そして経営者としての 自分のためでもある。 花は、組織にとって単なる装飾ではなく、 「呼吸」をつくる存在である。   20251008074757