池本克之です。
経営者という立場は、
何かと発言の機会が多いものである。
会議、面談、取引先との打ち合わせ、
社員へのメッセージ…。
毎日のように話す場があるため、
つい「伝えること=言葉にすること」と
思い込みがちである。
社長は寡黙であるほうがいい。
なぜなら、
言葉を多く重ねるほどに、
社長の信用度は確実に下がっていくからである。
第一に、
発言が軽く見られるようになる。
人は、頻繁に大量の言葉を聞くと、
その一つひとつを
深く受け止めなくなる。
社長が日々あれこれと口にすれば、
どれが本当に重要なメッセージなのかが
曖昧になる。
特に、昨日と言っていることが
少しでも違えば、社員は
「どちらが本当なのか?」と疑い始める。
言葉の重みは、発する回数に反比例する。
必要なときだけ発する言葉は響くが、
常に発していれば
空気のように薄まってしまう。
第二に、
「自らハードルを上げてしまう」
危険である。
大きな構想や方針を軽い気持ちで
口にすると、
周囲はその実現を期待する。
しかし、状況の変化で実現が
難しくなれば、
その発言は「有言不実行」として
記憶される。
発言の一貫性や実現性を守るには、
口数を減らし、言葉を精査する
必要がある。
第三に、
言葉が多すぎると「聞く力」が失われる。
社長が会話の主導権を握り続ければ、
社員は安心して意見を言わなくなる。
結果、現場の情報が上がらず、
意思決定が鈍る。
経営判断に必要なのは、
社長の言葉よりも現場の事実である。
そのためには、社長が黙り、
相手に語らせる時間をつくることが
欠かせない。
では、寡黙な社長になるには
どうすればよいか。
1. 話す前に
「この言葉は本当に今必要か」と
自問すること。
2. 会議や面談で最初に結論を言わず、
相手の考えを先に聞くこと。
3. 沈黙を恐れないことだ。
沈黙は不安を生むが、
その間に相手は考え、言葉を探す。
そこで出てくる意見こそ、
現場の本音である。
社長の言葉は経営資源であり、
戦略的に使うべきものである。
多くを語るよりも、
必要なときに必要なだけ語るほうが
影響力は増す。
そして、
その静けさが社長の信用度を高める。
経営者に求められるのは、
雄弁ではなく、
言葉を選び抜く力である。
私は、社長が本当に発すべき言葉は
年に数回しかないと考えている。
それ以外は、耳と目を使い、
現場の声を集めることに
専念すべきである。
寡黙であることこそ、
社長の存在感と
信頼を最大化する道なのである。
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